Webデザイナーへの就職を厳しいものにする3つの壁

Webデザイナーへの就職を厳しいものにする3つの壁

Webデザイナーの就職を厳しいものにしている理由は大きく3ジャンルあり、さらに細かく分けると6個の具体的な理由が見えてきます。

壁① スタートラインに立つ前の壁が高い

成るために資格が必要な仕事ではないにもかかわらず、まるで資格業のように事前準備が必要な点がWebデザイナーのハードルを高めています。

知識とスキルを身につけるのが厳しい

内定を獲得するのに必要十分な知識とスキルを身につけるのが難しいです。理由を書きます。

必要なスキルが雑多すぎて何を身につければいいか分かりづらい

HTMLとCSSはいるだろうけどSCSSってなんだ?あとJavaScriptは必要なのか?Javaとは違うのか?……とWebデザインには様々な知識が雑多に絡み合っています。
HTMLとCSSはいるだろうけどSCSSってなんだ?あとJavaScriptは必要なのか?Javaとは違うのか?……とWebデザインには様々な知識が雑多に絡み合っています。

Webデザイナーになるために必要な情報は、ネット上にたくさん転がっており、無料の学習教材や動画コンテンツ、ゲーム感覚で学べるツールなど膨大なデータが存在しています。

しかし、それら「HTMLを学ぶ」「JavaScriptを学ぶ」といった単元ごとには洗練されていますが「Webデザイナーになるために必要な知識」という視点でまとまっているわけではありません。

Webデザイナーに必要なスキルは非常に多いですが、体系的にまとまっているサイトが少ないのです。

Webデザインスクールなどであれば体系化されたカリキュラムを持っていますが、それを書籍やネットで見つけるのは困難です。

voice
ネットの情報が多すぎて混乱しました。どの情報が新しくて、どの情報が古いのかすら分けが分からず、サイトAとブログBで言ってることが違うと、矛盾をうまく消化できずに行き詰まり感を覚えました。ドットインストールやプロゲートを使ってみたのですが、どうしても頭に入ってこず……。流し見して終わりました。結果的には挫折し、しかし興味は尽きなかったので別の学習法を選ぶに至りました。
メンタリングの受講生

どこまで深く学べばいいのか分かりづらい

HTMLタグは何個覚えるのか、CSSはどれとどれが使わないのか、JavaScriptは全て覚えるべきなのか……と就職までにに必要なWebデザイン知識の深さはマチマチという点が鬼門です
HTMLタグは何個覚えるのか、CSSはどれとどれが使わないのか、JavaScriptは全て覚えるべきなのか……と就職までにに必要なWebデザイン知識の深さはマチマチという点が鬼門です

しかも、各スキルをどこまで学べばいいのかは、スキルによって異なります。この判断を未経験者が行うのは不可能です。それができればすでにプロです。

では、全部学べばいいか、というとそれはそれで困難です。時間がかかりすぎます。必要な全てを学ぼうとしたら、1日4時間学習しても17ヶ月はかかると言われています。

内容も難しい

メタタグ、フレックスボックス、メディアクエリ、レスポンシブ化、アトリビュート……などなど未知のワードがオンパレードで混乱の渦に巻き込まれます
メタタグ、フレックスボックス、メディアクエリ、レスポンシブ化、アトリビュート……などなど未知のワードがオンパレードで混乱の渦に巻き込まれます

「量が多い&どこまで学ぶべきか分かりづらい」という2つに加えて、1つ1つのスキルが難しくて専門的という現実があります。

Webデザイナーになるための知識とスキルを身につけるだけでもハードルは十分に高いのです。

voice
当サイトでも独学用のWebデザインカリキュラムを用意していて体系化されてます。ご興味あれば無料で公開しているので覗いてください。
ソイラテ編集部 さいじゃく

ポートフォリオを用意するのが厳しい

ポートフォリオなるものが必要らしい、という情報は聞いたことがあると思います。私も面接官として大量に見てきました。判断材料として重要です。

それなりの量と、加えて質が求められます。

ポートフォリオの作品は何個あるといいですか?

決まりはないです。1個では少ないですが、20個あっても全部は見てもらえません。4個から10個ほど用意すれば、その中から1つか2つをじっくり見てもらえるという感じです。

しかし、当然ポートフォリオを作るには、作品が必要です。

作品を作るには、動機が必要です。動機とは仕事であればベストですが、それができれば苦労しません。

そこで多くの人が自主制作することになります。

自主制作では、数を用意することが困難です。アイデアが枯渇してしまうからです。自力で自主制作作品を4個以上作れれば大したものですが、理想論でしょう。

知識とスキルを身につけるだけでも大変なのに、さらにポートフォリオを用意しなければならない、という点がますますWebデザイナーが仕事を見つけにくくしているわけです。

やっと1つ目の壁の話が終わります。そう1つ目の壁です。まだ2つあります……。

voice
未経験者がどうやってポートフォリオの数を用意すればいいのか、そこは別途取り上げます!カリキュラム化していく予定です
ソイラテ編集部 さいじゃく

壁② 募集要項の壁が高い

いざスタートラインに立っても、次は募集要項や応募条件などの高い壁が立ちはだかっています。

未経験歓迎!でも実務経験者が優先という現実が厳しい

未経験OKとしてる求人の狙いは、実務経験者に「応募のハードルは高くないから安心してね」と伝えることです。

本気で未経験歓迎としている会社もありますが、そこは育成する土壌が整っていて資本のある大きめの会社でしょうから、倍率も自ずと高まります。

またWebデザイナーは転職が当たり前の職種なのも問題です。下図をご覧ください。

I.C.Eによる制作スタッフへのアンケート
I.C.Eによる制作スタッフへのアンケート
調査機関I.C.E
調査期間2018年12月4日~2018年12月21日
対象I.C.E加盟企業
回答数257(社数か人数かは不明、おそらく人数)
出典労働環境実態調査 制作スタッフアンケート(※1

勤続年数が3年未満の人は46.7%……ほぼ2人に1人です。Webデザインは20年以上は歴史があるので、ライバルに如何に転職も多いか分かる統計です。

ライバルは実務経験者なのですから、正社員という枠で未経験者は不利という現実です。

voice
この統計の回答すべてがWebデザイナーではありませんが、半分くらいがWebデザイン関連の職種です。
ソイラテ編集部 さいじゃく

年齢と居住地という現実が厳しい

indeedなどの転職サイにて、各都道府県ごとに「未経験者OKかつ正社員」という条件でWebデザイナーの求人を検索して調査しました。

数値ごとに就職難易度表としてざっくりまとめたものが下図です。

就職難易度をネット上の求人検索件数から作成しました
就職難易度をネット上の求人検索件数から作成しました
調査機関ソイラテ
調査期間2021年3月11日
対象indeedや転職サイトなどで公開されている求人情報をカウント。なお、直近1ヶ月の求人に限定してカウントしている。
検索条件未経験OKで正社員としてWebデザイナーを募集している求人を検索し、検索結果数を年代ごと都道府県ごとにデータをまとめた。

詳しいデータはこちらに置いておきます。ご興味のある方は開いて覗いてください。

未経験OKかつ正社員としてWebデザイナーを募集している求人を検索し、検索結果数を年代ごと都道府県ごとにまとめています。

都道府県&年代別の求人検索結果数(単位:件)
20代30代40代
北海道821
青森県000
岩手県100
宮城県100
秋田県000
山形県000
福島県000
茨城県000
栃木県100
群馬県300
埼玉県311
千葉県400
東京都1874412
神奈川県1021
新潟県100
富山県100
石川県200
福井県722
山梨県000
長野県000
岐阜県611
静岡県620
愛知県2332
三重県210
滋賀県200
京都府1000
大阪府50122
兵庫県1000
奈良県100
和歌山県000
鳥取県400
島根県100
岡山県500
広島県500
山口県100
徳島県400
香川県100
愛媛県200
高知県100
福岡県2321
佐賀県000
長崎県200
熊本県200
大分県100
宮崎県300
鹿児島県100
沖縄県311
合計 398件 73件 24件

都内近郊の若手(ライオングループ)

ライオングループは、新卒と第二新卒を含む20代のうち、都内近郊に住んでいる人たちです
ライオングループは、新卒と第二新卒を含む20代のうち、都内近郊に住んでいる人たちです

ライオングループは非常に有利です。

ただし学生の場合は、(Webデザイナーに限らず)インターンシップへの参加率が8割を超えている(マイナビの大学生インターンシップ調査2019)(※2)ため、ウェブ制作会社でもインターンシップを行っていた場合は参加しないとライバルに一歩出遅れることになります。

大都市圏内の中堅(クマグループ)

クマグループは、大都市圏の20代と都内近郊の30代前半の人たちです
クマグループは、大都市圏の20代と都内近郊の30代前半の人たちです

若手でも都内から離れるほど求人検索ヒットする数は少なくなるため、ライオングループよりも就職は厳しいでしょう。

また、30代になると求人検索にヒットする件数は著しく減ります。それでも都内近郊に住んでいるクマグループにはチャンスが多くあります。

大都市や地方にお住まいの方(コアラグループ)

コアラグループは、地方に住む20代と、大都市圏の30代前半です
コアラグループは、地方に住む20代と、大都市圏の30代前半です

地方では絶対数が圧倒的に少なくなります。そのため若手であっても職に就くには険しい道のりになるでしょう。

大都市圏内に住む30代前半の方は、少ないパイを20代の若手や実務経験者と奪い合うことになるので、厳しい戦いになるでしょう。

リファラル採用

求人数が少ないとはいえ、人手不足すぎて求人に手が回ってないケースや、まだまだ求人に投資する資本がない会社も多いでしょう。

その場合でも、リファラル採用であれば入り込む余地が生まれます。リファラル採用とは「知人の紹介」のことです。

学生では難しいですが、前職の知り合いの紹介などを通して、直接企業に話しを通せればミスマッチが少なく、確度の高い就活が行えるでしょう。

30代後半の方(キツネグループ)

キツネグループは、地方にする30代前半と、それ以降の年代の人達です
キツネグループは、地方にする30代前半と、それ以降の年代の人達です

今回は未経験から正社員を募集している求人を検索したため、検索結果0件のエリアも多くありました。ただ、経験が多い分、前職のツテやプラスアルファの価値をアピールして正社員入社するケースも見てきましたので、ハテナマークとしています。

アルムナイ採用

なお、最近ではアルムナイ採用という手法が普及しつつあります。

これは何らかの理由で離職した元社員を再雇用する手法です。要は「またうちで働かない?」というオファーです。

Webデザイナーを目指す人の一部は、前職や前々職で発注側であった経験などがあるケースがあります。そういったケースでは、前職の会社で新たにWebデザイナーの募集があれば再雇用を検討してもらうというのも手です。

アルムナイ採用は比較的大きな企業が中心に進めていますが、アルムナイ採用していると明言していなくても前職のツテなどで再雇用を狙えないか、試してみるのも手です。

Webデザイナーがドンドン増えてるという現実が厳しい

雑誌Web DesigningのWebデザイナー白書によると、制作会社の8割が新たなWebデザイナー採用に前向きということです。つまり今後もどんどんライバルは増えていきます。これは将来性の高い職種なので仕方ない一面ではあります。

マイナビ出版のWeb Designingという雑誌で紹介されていたアンケート結果です。2020年10月から11月のコロナ禍で行われています。
マイナビ出版のWeb Designingという雑誌で紹介されていたアンケート結果です。2020年10月から11月のコロナ禍で行われています。

始めるなら今がそのときです。2030年までに確かな実力を身に着けておく必要があります。

詳しくはWebデザイナーの将来性に関する記事をお読みください。

壁③ コミュニケーションスタイルの壁が高い

いよいよ最後の壁です。

コミュニケーションスタイルとは、話し方だけではなく考え方や聞き方や質問の仕方や受け止め方など、あなたを表現する全てだと思ってください。

コミュニケーション能力というと気配りができる人とか、社交性に長けた人とか、面白い人とか、そういうイメージがあると思います。

しかし、Webデザイナー採用で求められるコミュニケーションとは、そういうイメージとは異なります。そのため、ここではコミュニケーションスタイルという言い回しをしています。

詳しい解説の前に採用担当者(出典:雑誌 Web Designing Vol.206(※3))の声を見てください。企業が何を大事にしているか読み取れると思います。

voice
学ぶ意欲
とどまることなく学び続けられる人を求めています
スタッフ数4名の会社
voice
経営的な視点
入社する会社に対して、経営的な視点を持って取り組める人材
スタッフ数2名の会社
voice
相性大事
少人数の会社のため、キャラクター面や、お互いの”合う合わない”には気をつけています
スタッフ数5名の会社
voice
モラル
いい人を求めています(モラルの面で)
スタッフ数3名の会社
voice
強い思い
未経験者の方でも、地元でクリエイティブな仕事をやっていきたいという強い思いがある方であれば歓迎
スタッフ数9名
voice
育成が重要に
優秀な人材がクライアントワーク系の企業から事業会社に移動しつつあると感じています。そのため今は「事業会社で活躍しているマネジメント層」を狙うか、そうでなければ「若手を採用して育成する」かのいずれかしかない、というのが実際のところです
スタッフ数45名の会社
voice
コミュニケーションこそ
Webの業界だけの話ではないと思いますが、コミュニケーションがしっかり取れる、課題解決ができる人材を求めています
スタッフ数16名の会社
voice
基礎の積み重ね
なにごとにも「基礎」の積み重ねを嫌がらず、地道に努力できる人。新技術のキャッチアップ、インシデントの予防に取り組める人
スタッフ数1名の会社
voice
カルチャーフィット
会社のミッションやビジョンへの共感と、それにともなうカルチャーフィットが一番大事だと思っています
スタッフ数17名の会社
voice
淡々と
真面目さと、淡々とした成長意欲がある人を採用したいと考えてます。
スタッフ数100名の会社
voice
ミッションへの共感
会社のミッションに共感してくれるかどうか
スタッフ数8名の会社
voice
チームの一員として
小さな会社なのでチームメンバーとうまくやっていけそうかを重視しています。また、エンジニアとして新しい文化になじんでいけるかも見ています
スタッフ数6名の会社

Web Designing編集部のコメントも引用しておきます。

制作会社が求めているのはスキルだけではなく、自分たちの個性やミッションを理解し、ともに成長できる仲間なのでしょう。Web業界で働こうと考えている皆さんは、その点を頭に入れておくと就職活動がうまくいくのではないでしょうか。

雑誌 Web Designing

多くの採用担当者が「ビジョンへの共感」を求めていることが伺えます。

では、ビジョンへの共感とは何でしょうか。そこにコミュニケーションスタイルの答えがあります。

クリエイターの転職3大理由にヒントが有る

ビジョンへの共感の正体を知るためには、クリエイター・エンジニアが転職する3大理由を知る必要があります。これはマイナビによる転職動向調査2018(※4)の結果です。

  • 1位は給与が低いこと(45.6%)
  • 2位(同率1位)は会社の将来性・安定性に不安があったこと(45.6%)
  • 3位は事業戦略や経営理念に合わなかったこと(36.8%)

3位に注目してください。1位と2位は採用担当にはどうしようもありません。しかし3位の事業戦略や経営理念に合いそうか合わなそうかは、採用前に相互理解を進めれば、ある程度見抜けるようになります。

この点をクリアした人材を採用できれば、転職リスク36.8%を未然に防ぐことができるのです。

これが採用担当者がこぞって「ビジョンへの共感」と言っている理由です。

ビジョンへの共感の難しさ

ビジョンへの共感がなぜ重要視されているか分かりましたが、これがどう就職の厳しさに繋がるのでしょうか。

  • 御社のビジョンに100%共感しています!

    会話
  • OK!採用!

    会話

……というだけならカンタンですよね。これなら面接なんていらないです。

じつはビジョンに共感する(≒事業戦略や経営戦略と合わなかった)というのは、単に理念や方針に賛同するだけではありません。

逆に考えてみます。ビジョンに共感できない人材とはどういう人でしょうか。答えは、会社に馴染めない人材です。

そして会社に馴染めないとは、制度や給与などは除外すると、大きく次の4点が挙げられます。

  • 会社の客層と馴染めなかった(相手に欠点があるというより相性が悪かった)
  • 会社の案件・商品と馴染めなかった(内容に不満があるというより相性が悪かった)
  • 会社の同僚と馴染めなかった(相手に欠点があるというより相性が悪かった)
  • 会社の文化・社風に馴染めなかった(文化がおかしいというより相性が悪かった)

この4つをまとめていうと「ビジョンに共感できなかった」「事業戦略や経営戦略と合わなかった」となります。

ここでは4つのポイントを挙げましたが、採用担当者はこういったポイントを独自に持っています。そのポイントごとに、あなたのコミュニケーションスタイルと会社の相性が合うかを評価していきます。

そして難しいのは、会社によって求められるコミュニケーションスタイルは全く違うということです。

さらにコミュニケーションスタイルが合っているかどうかは、募集要項やWebサイトだけではわかりません。

直接会って話して過ごしてみないと確実には分からないものです。

努力の結果、見事に就職できてもコミュニケーションスタイルが合っておらず、3年も経たずに転職を考える可能性が高いという厳しい現実があります。ここに最後の壁があるのです。しかもこの壁はインターンシップでもしない限りは実質的に突破不可能です。

その他の、就職が厳しいと感じさせるポイント

給与が低いと聞きましたが、本当ですか?→平均250万から500万

残業時間が長くてブラック企業が多いと聞きましたが本当ですか?→残業は長いがブラックは減った